ちぇこです。
先日本屋さんに行ったところ、5巻でもう完結したとばかり思っていた少女マンガ「orange」の6巻が出ているではありませんか!
さっそく買って読んでみたところ、正直、今までのどの巻より良かったと思いましたので、改めて1巻から振り返ってあらすじとネタバレとわたしの感想をまとめてみたいと思います。
では行ってみましょーう!
orange1巻:10年後の自分から届いた手紙
主人公の高宮菜穂(たかみやなほ)のもとに、10年後の自分から手紙が届いたのは16の春のこと。
その手紙には、これから菜穂の身に起こる出来事と、そのときに菜穂に取ってほしい行動が書かれています。
はじめはイタズラかと思った菜穂ですが、手紙に書いてあるとおり、東京から成瀬翔(なるせかける)という転校生がやってきたのでした。
須和弘人(すわひろと)、村坂あずさ、萩田朔(はぎたさく)、茅野貴子(ちのたかこ)と菜穂はそれから、翔をグループの仲間として迎え入れます。
自己主張が苦手で、「まわりに迷惑をかけるなら自分が損をするほうがいい」と何事も遠慮する菜穂のことを翔はよく見ていて、さりげないフォローをしてくれます。
こうして、菜穂は翔を好きになっていきます。
しかし、10年後の自分からの手紙に、10年後の世界に翔はいないこと、事故で亡くなってしまうことが書かれています。
(10年後の菜穂は、実は須和と結婚し、赤ちゃんがいます。久々集まってみんなで埋めたタイムカプセルを開けた時に、翔の死は事故ではなく自殺だったことが明らかになったのです。)
この手紙は、本当は翔を救えたと後悔している菜穂からの、過去の私へのメッセージだったということです。
手紙を受け取った菜穂は、「翔を救う」と誓って、手紙の指示を少しずつ実行していきます。
しかしそれでもなかなか簡単にはいかず、お互いに好意を持っているのにすれ違いが続き、翔は上田先輩と付き合ったりとなかなかやきもきさせられます。笑
それでも、少しずつ、手紙に書かれていることと違う現実が動き始めていました…。
***1巻の感想***
10年後の自分から手紙が届くというストーリー。まずこの設定が本当に秀逸だと思いました。
そこへ、主人公の相手役が自殺をしてしまったという要素が加わって、なんてハラハラする、壮大な少女マンガなんだろうと思ったんですね。
少女マンガ(特に別冊マーガレットなどの王道もの)というのは、基本的にはドキドキしてときめいて、すれ違いをもどかしく感じて、最後はキュンとしてハッピーになって終わるものだと私は思っているので(笑)、
この題材の大きさ、重たさというのはとてもチャレンジだなと思いました。
ただただ、このときは「どうか、どうかみんな頑張って、翔を救ってほしい、違う未来を作り出してほしい」と願っていました。
orange2巻:翔の苦しみと死の真相を知って
手紙に書かれたことを着々と実行していく菜穂。
勇気を出して文化祭の花火に翔を誘い、ロマンチックな雰囲気で一緒に花火を観ることができた。
しかしそのあとの手紙で、翔が事故ではなく自殺だったことを知って衝撃を受ける菜穂。
浴衣を着て一緒に夏祭りに行ったとき、翔の自殺の原因と思われる「翔の後悔」について聞き出した菜穂。
翔は、母の病院に付き添うのをすっぽかしたことで、母が自殺してしまったことを告白。母の自殺は自分のせいであると、強く自分を責めていたのだ。
自分の力だけでは抱えきれなくなった菜穂は、須和に手紙のことを話してみることに。すると菜穂が言い出す前に須和が「届いた?手紙」と聞いたのだった。
***2巻の感想***
変わらず重苦しいテーマが根底を流れているものの、少女マンガ特有のキュンキュンシーンが多彩で楽しめた2巻。
菜穂に想いを寄せる翔と須和のやりとりが、見ていて非常にうらやましいぞ。笑 これでいて、菜穂は2人が自分のことを好きだなんて全然気づかないんだもんなー。ありえないっ!笑
でもそんなところが、可愛くて男子を惹きつける要因なのでしょう。(なんだかすっかりおばちゃん目線)
2巻の終わりでは、手紙が届いていたのは実は菜穂だけでないというところで終わり、ますます続きが楽しみになったのでした。
(ちなみに、10年後と今は全く交わることなく、別に派生したパラレルワールドしてこの作品では描かれています)
orange3巻:切なさと、みんなの愛
上記写真…なんだかヘンですよね。そうなんです、コミックの大きさが違います。
2巻までは別冊マーガレット(集英社)のコミックでしたが、3巻からは月刊アクション(双葉社)にかわり、大人コミックになっています。
きっといろいろな大人の事情があったのでしょうが、初めてこういうパターンに出くわしたのでびっくりしました。
3巻ですが、まずみんなで翔の誕生日をお祝いします。
そのときに、翔は須和にもらった花束を菜穂に渡して「俺の気持ちは気づいてもいいよ」と告白します(ずっきゅーーん!)
ここで須和に焦点が当たります。
須和は、10年後の自分からの手紙で「あの頃の俺はふたりを応援できなかった。けれど翔が死んでボロボロになる菜穂を見てすごく後悔した」と。だから「ふたりがお互いの気持に気づけるようにしてほしい」と書かれていたのです。
これを、須和は素直に実行していたのです。
また、須和は翔が自殺未遂をするきっかけとなった出来事を阻止するために、翔を全力で救い、「死にたい」という翔の思いごと抱きしめます。
それに勇気をもらって、菜穂も勇気を出して翔に告白します。
***3巻の感想***
3巻の感想。それはもう、「須和、切ない!」に尽きます。
翔の思いごと受けとめて、励まし、身を引く須和はなんてイイ男なのでしょうか…。
私は正直なところ、このストーリーにおいて須和は手紙のとおりに動く道理はないと感じてしまいました。
例えば菜穂は、自分の気持をしっかり伝えなかった自分に後悔している。うん、それはできるなら勇気を出してみようか。頑張ってみようか、と応援したくなります。
だけど、須和の場合。須和が菜穂を好きでその気持ちを止める必要はどこにあるのでしょうか。ましてや、パラレルワールドとはいえ、未来の自分が後悔しているからと言って過去の自分に気持ちや行動を制限させる意味がわからないです。(あ、なんかヒートアップしてしまいました。笑)
そして、ここまでして愛されまくっている翔。はやくみんなの温かさに気づいて「自分」を生きて前を向いてほしいなと、強く願ったのでした…。
orange4巻:大きく未来が変わるような気配
手紙は、菜穂以外の4人にも届けられていました。
4人は力を合わせ、翔が亡くなってしまうという過去を変えるために奔走します。
翔にとって大きな出来事であった体育祭。
4人は浮かない表情の翔を見て、心情を探ります。すると翔は「実は母親は本当はいなくて死んだんだ」ということをやっと告白。
「死ぬはずじゃなかったのに 母さんは今頃悲しんいるのに 俺だけ平気で笑ってていいのかな」と、
自分が母を死に追いやってしまった、自分が母を救えなかった、その後悔でずっと自分を責めている翔。
その後悔は簡単に消えないかもしれないけれど、少しでも軽くしたいと4人は翔を励まします。
体育祭のクライマックス、5人で走ると決めたリレー。
ひとりひとりがバトンを繋ぎながら、翔への想いを伝言していきます。アンカーを翔がつとめ、最高の笑顔と思い出で塗り替えることができたのでした。
***4巻の感想***
4巻は、わりと光が差すような、明るい展開で心が温まりました。
特にリレーのシーンは秀逸!!!
トップバッターの須和が翔への伝言として貴子にバトンとともに「負けるな」と伝え→貴子はあずさに「負けるな」「約束」と伝言→あずさは萩田に「負けるな」「約束」「ずっと一緒」と伝言→萩田は菜穂へ「負けるな」「約束」「ずっと一緒」「10年後も」と伝言→菜穂はアンカーの翔へ「負けるな」「約束」「ずっと一緒」「待ってるよ」「みんなで」!と伝えます。
おー、なんと素敵なんでしょ(TへT)
こうして見事1位となった翔の笑顔は本当にキラキラしていました。
きっと未来は変わる。これから変わっていくはずだ。そう思った4巻でした。
orange5巻:翔を救えるのは翔だけ
最終巻。
4巻の終わりには、二年参りの日に菜穂と翔は喧嘩をしていまい、それきりふたりは距離ができ、そのまま翔は亡くなってしまったのだと書いてありました。
それを受けて、菜穂は翔を傷つけないように言葉に気をつけて当日に挑みました。
それでも、結局は言葉を変えても翔の怒りや恐れの琴線に触れてしまい、翔は「これ以上近寄らないで」と言い残し菜穂のもとを去っていってしまいます。
菜穂は、今日がきっかけなら翔が亡くなるのは自分のせいではないかと自分を責めます。
そこから、自殺してしまった方の翔の、回想シーンが展開されます。
母親が急に決めた引っ越し、翔の自殺未遂、母の自殺の原因となった自分の行動。そして、母が自殺直前に翔に残したメッセージを見つけます。
そこには、翔には謝らないといけないことがたくさんあるということ、いつも勝手で翔の気持ちを考えていなかったこと、そしてこれから翔がやりたいと思うことをやってほしいということ等が書いてあります。
これを読んだ翔は自転車に乗ってトラックの前に飛び出します。
「俺のせいでごめん」と、「死んだら後悔も全部消えるのか」と、「自分が死んだら悲しむ人はいるのか」と…そして「全部どうでもいいか」と…全てを放棄し、命を投げだしました。
そんな未来を書き換えるため。菜穂は今までの自己主張できない自分からすっかり脱皮して、これでもかと翔に体当たりしていきます。
そうして迎えたXデー。
夜に行方がわからなくなった翔を4人が探し回ります。結局、翔の目の前にトラックが現れますが、翔は無事でした。直前で「怖くなった」「みんなとの思い出が消えてしまうのかと思った」「まだ死にたくないと思った」と。
4人の行動と作った思い出によって、翔に死をとどまらせることに成功。
…こうして翔の命は救われ、明るい未来に向けて、みんなで1歩踏み出したのでした。
***5巻の感想***
ひとまず…「良かったぁ…」の一言です。
これでもし「自殺は免れたけど未来は変えられないから翔は病気で死んじゃった」とか「生死は神が決めてるから今度はトラックの運転手が実は飲酒運転をしていて結局は事故で死んでしまった」みたいな結末だったらどうしようかと思いましたが。笑
翔の死によって傷つく人がいなくなり、そして翔自身が自分を傷つけることなく決着して、ほっとしました。
それにしても、4巻と打って変わって5巻は重苦しく、大変ダークでヘビーな巻でした。
はじめは繊細で優しくて、イケメンな翔を応援する一心でしたが、途中からハラハラのほうが大きかった。
私自身がそうだったのですごく思うのですが、「弱くて、相手に何もしてあげられない自分」という被害者の立場に自分を置くことで、なにひとつ自分の人生を生きていないという負のループに陥っているのが、翔だと思います。
もちろん、最愛の母に死なれるという事実はあまりにも重いです。しかも、私からすれば、まるで息子への当てつけのように死んでいった母親の気持ちは全然理解できません。
きっと翔のお母さん自身も、きちんと愛してもらえなかった生育環境にあったことは間違いないと思います。
でも、それでも、翔にはあまりも素晴らしい仲間がいるということ。そこに最後やっと気づけて、本当に良かったです。
他の4人も、本当によく頑張りました。だけれども、こんなに身を粉にしても、結局いまのこの魂を、自分を中心に置いて生ききるかどうかは、翔本人にしか決められません。
だからこそ、10年後の4人が背負わされた十字架はあまりに重いと感じました。
orange6巻:待望の、須和のお話に救われた。
さてやっとこさ6巻です!!!
わたしは、この6巻こそが、この「orange」という作品の中で一番素晴らしいと感じました。
実際に作者の高野苺さんも連載当初に考えていたラストがこの6巻のお話だったと語っています。
6巻では、個人的にどうしても不憫に思えてならない超イイ男「須和」にスポットが当たっています。
須和が、菜穂にプロポーズをしたお話と、翔が亡くなった世界と翔を救おうとした世界の2つの未来が描かれています。
高校生の須和は、未来の自分は「翔がいなくなって弱っている菜穂に近づいて、優しいふりをして翔から菜穂を奪ったやつだ」と自分を責めます。
でもここで泣けるのが、萩田とあずさ、貴子のセリフ。
貴子「私の知ってる須和は、そんなやつじゃない。菜穂が泣いてたら、慰めるのは当然でしょ。菜穂のためにアンタが翔の代わりになってあげたんでしょ。私の知ってる須和はそういうやつ」
萩田「おまえが一番大事なのは高宮と翔だ。どちらか一方だけを幸せにすることも傷つけることもおまえは選べなかっただけだ」
あずさ「その手紙は須和にしか書けないし、須和だからその手紙に答えられたんだよ。良い人ぶってるんじゃなくて ただの良いひと。」
あーーー泣けるーー。須和もここでポロンと涙しています。
仲間って、サイコーーだなーーー!
そして実際に、菜穂と翔が結婚して、赤ちゃんが生まれているバージョンの未来図も少し展開されています。
またもうひとつのお話として、翔が亡くなってから須和が菜穂にプロポーズをするまでのお話もアナーザーストーリーとして描かれています。
翔の影を追い、翔のことが忘れられない菜穂。そんな菜穂をなんとかしようと焦る須和。菜穂の切ない笑顔がとても印象的でした。でも、菜穂の傷ついた闇の部分を描ききったところが逆に、説得力を増して良かったです。
結局、翔がいなくなった方の未来の菜穂は、相変わらず自己主張ができず断れない性格のままで描かれていました。そんな優しすぎて相手に引きずられてしまうところが、翔と菜穂の共通点であり、お互いに惹かれあった理由だろうなと思います。
そんな菜穂に時間をかけ、須和が行ったこと。それは、生きていたころの翔が、菜穂としたいデートを再現するものでした。
でも「翔の代わりになれない自分」の不甲斐なさに、涙する須和。一緒に泣く菜穂。
こうして、須和は最後のチャンスとして支柱神社で菜穂にプロポーズ。
菜穂からの返事には、今までしてきた楽しかったデートの数々が挙げられていきます。でも須和は「違う。それは全部オレじゃない。翔がしたかったデートだ」と内心責め続けます。
けれど、菜穂の最後の言葉。
「でも 一番うれしかったのは 誕生日にプロポーズしてくれたこと」。
だーーー(T▽T)涙腺崩壊です。
「あれが生まれて来て一番幸せだった」と、「もういない人より、目の前の人を大切にしようと思う」と、菜穂は言ったのです。
よしっ!菜穂いいぞいいぞーー!
何より、いい男すぎる須和の思いが報われて、本当にうれしかった。安心した。良かった。
この6巻があって、救われた人はたくさんいるのではないでしょうか^^
6巻までを読み終えて
ふー。長いですね。5,000字オーバー。笑
とにもかくにも、このorangeはまず題材が素晴らしかったと思います。
そして次に、言わずもがな絵がかわいい。さすが高野苺さんです。
そして、キャラクター設定と描写が素晴らしい。特に須和、あずさ、萩田、貴子が本当にいい味を出しているし、何度もくすっと笑わせてもらいました。こんなお友達ほしい。
一方で身もふたもないことを言うと、どれだけまわりがいい子たちで友情を与えてくれても、最終的には翔以外の人が、翔の心を救うことはできないということも実感しました。翔は、自分で気づいて、そして自分の足で人生を歩んでいかないといけません。
自分の「今」に責任を持つこと。
このお話がパラレルワールドで過去と未来を対比しながら進んでいくものである前提のため難しいのですが、
わたしたちがいつも意識しないといけないのは「今」だけだと思うんですね。
過去は変えられない。ゆえに、引きずられてばかりではいられないんです。
翔のお母さんが亡くなったのは翔のせいではないということ。
また逆にいうと、未来の私が過去の私を制限する権利もないということ。
結局は、いつどんな時も、「その時を後悔しないように生きる」それに尽きると思いました。
そして、嬉しいことも、楽しいことも、苦しいことも、悲しいことも、すべて自分で責任を取って自分で感じきること。
他人の苦しみや悲しみは、他人のものであるときっちり認識すること。自分が何かしてあげられると過信しないこと。
そんなことを思いました。
作者の高野苺さんもこうツイートされていますしね。
人生には選択が沢山あるけど、どの道を選んでも全部自分の選択で、どの道を選んでもどうにか上手くやっていると思います。辛い道は必ずやってくるものだけど、どうにか上手く乗り越えていると思います。10年後、どんな道でも自分の選択が間違えてないと笑って思えるので、気楽に歩いていきましょう。
— 高野 苺 (@ichigo_takano) 2017年7月24日
いろいろと考えさせられる、とても良いマンガでした。読むことができてよかった。
作者のあとがきをみると、どうやら7巻があるようです…これまた、楽しみができてしまいました♪
また、orangeは2015年に土屋太鳳さん、山﨑賢人さんで映画化されています。
興行収入32億円を突破し、 第39回日本アカデミー賞 新人俳優賞をW受賞しているそうです。す、すごい!
ちなみに、この実写版「orange」も、アニメ版「orange」も、アマゾンプライム
に入っている方は無料で視聴できます。
まだ入っていない人も無料体験があるので要チェックです。
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精神面が上手に描かれたおすすめの少女コミック
最後に、精神面が素敵に描かれたわたしのおすすめコミックを紹介しますね。
まず、はじめにorangeを読んだときなんとなく雰囲気が似ているなと思ったのが
そして次が「君に届け」が大ヒットした椎名軽穂さんの
最後に、心理面を上手にストーリーに組み込ませる天才だと思っているのが聖千秋さん。
どれもおすすめです☆彡